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ユニバーサルロボット
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【ユニバーサルロボット】MT Solar(米国、金属加工)の協働ロボット導入事例:MIG溶接

事例概要
 MT Solar社(以下、MT Solar)はあらゆるサイズのソーラーモジュール用架台を設計・製造しています。ユニバーサルロボット(UR)のUR10eを活用したVectis Automation社(以下、Vectis)製のセルフ設置(DIY)Cobot Welding Toolが今では多種多様な溶接を行い、迅速な段取り替えと生産の最適化を可能にしています。MT Solarは300%という需要の急増に応えつつ、労働力不足を克服し、作業員を溶接の反復作業から解放しました。

課題
 MT Solarはモンタナ州チャーロの美しい街並みの中に本社を置く太陽光発電関連機器メーカーです。毎年夏に同社製品の需要は300%も増えますが、この繁忙期に対応する熟練した溶接作業員を見つけられずにいました。MT Solarのオーナー兼社長のTravis Jordan氏はある日、MT Solarの溶接作業員の1人から溶接ロボットに関する記事を手渡されました。このとき、労働力不足の問題は「まさに緊急事態」でした。Jordan氏はそのときを振り返って述べています。「彼は言いました。『これをぜひ検討してみてほしいんです。うちの問題を解決してくれるんじゃないでしょうか』私は、ロボットを検討すべきだと言うスタッフがいるのなら、ここで何か手を打つべきということだろう、と考えました」

 その当時、MT Solarのリードタイムは理想値の2~3倍でした。同社で働きたいという優秀で熟練した作業員がなかなか見つからなかったのです。Jordan氏の雇用に関する苦悩は全国的な傾向です。米国溶接協会の予測によると、2025年までに400,000人の溶接作業員が不足する可能性があります。MT Solarは従来型の溶接ロボットを検討しましたが、同一物の大量生産には最適であるものの、柔軟性に欠けると分かりました。

 多様な部品を多品種少量生産で製造するMT Solarにとって、柔軟な自動化ソリューションを見つけることがきわめて重要でした。「MT Solarを『ソーラー界のIkea』と考えてください。購入されたお客様が組み立てるため、客先にすべての部品が届かなくてはなりません。部品がすべて揃わない限り、出荷できないのです」(Jordan氏)

 Jordan氏は続けます。「従来の自動化には、プログラミングやセットアップに手間がかかるため、コストがかさみました。最初は従来型ロボットの導入も良い考えだと思われたのですが、設置、稼働、プログラミングにかかる時間とリソースを検討してみると、これで行こう、とは思えませんでした。従来型ロボットは柔軟性に乏しく、多品種が混載されていると扱えません。我々には、安全柵が不要で今いるオペレータが扱えるようなソリューションが良かったのです」

ソリューション
 URロボットに出会ったMT Solarは、考え方を大きく変えることになりました。「大きな違いは、協働ロボットなら作業員と一緒に働け、ティーチングしやすく、とても簡単に導入できるという点です。従来型の溶接ロボットは安全柵を必要とし、『悪夢のよう』な外観をしていますが、協働ロボットなら人とロボットが柵なしの近い距離で安全に協働できます。これが協働ロボットを活用した溶接ソリューションをより魅力的にしています。協働ロボットに絞って調べ、URロボットを活用したVectis社のCobot Welding Toolを見つけたとき、すぐにこれが取るべき道だと分かりました」 (Jordan氏)

 作業員は治具を使って作業セルをセットアップし、溶接対象となるワークを供給し、システムをプログラムします。プログラミングは、Vectis社Cobot Welding Tool付属のURCapプラグインソフトウェア経由で、URロボットのティーチペンダントの直感的な3Dインターフェースを介して行います。ペンダントにはVectisが開発した溶接ライブラリが入っており、PatternツールとTackツールを含む一般的な溶接作業の標準設定が用意されています。「溶接技能者には程遠い私ですが、その私が現場の溶接作業員1人を適当に捕まえてこう言うようなものです。『じゃあ私がペンダントを動かそう。君は溶接トーチを好きな場所に動かしてくれないか。どこで溶接を始め、どこで止めたい?角度は何度?』 そして私たちは最先端の溶接をじっくり考えたのでした」

 プログラミングが終わると、URロボットはMIG溶接サイクルを自律的に1回行います。UR10eは1サイクルにつき6~8個のワークを溶接します。ロックカラー、柱用クランプ、溶接ナットなどの小さい部品であることがほとんどです。URロボットはこれらの部品を指定された順番で溶接し、バッチ入替なしの1工程で4~12個の製品を完成させます。溶接作業が完了すると、作業員がワークを補充してシステムを再起動します。あるいは、必要に応じて急いで別の部品用の新しい溶接作業をプログラムします。URロボットは38分のタクトタイムごとに特定部品の溶接を行います。作業員は協働ロボットと協働し、溶接作業中にワークの投入、取り出しを行ったり、複数の異なる固定治具に対応できるようロボットのリーチを最大にしたりします。

導入が簡単
 MT Solarでのこの熱狂ぶりは協働ロボットがやってくる前からで、到着の朝は「興味津々」でした。「ロボットがトラックでやってきて、当然ながら私はワクワクしていました。なのに、オフィスを出た私が見たのはすでにロボットの梱包を取り除いてセットアップに取り掛かろうとしている作業員たちでした。私はこんな感じでしたね。『待った!僕にやらせてくれ!』 その日の午後にはもう生産用の部品で稼働していました」(Jordan氏)

 MT Solarのオペレーション・マネージャであり溶接技能員のMike Gillin氏は述べています。「このシステムで一番素晴らしいのは、最先端の科学者でなくても使える、という点です。私は溶接職人ですがロボットについては何も知らなかったし、コンピュータに明るくもありません。好奇心からロボットに触ってみたのですが、あまりの簡単さに本当に驚きました」



繰返し精度と品質向上、競争力強化
 作業マネージャであるGillin氏は述べています。「人手による溶接には大きなバラツキがあり、それが製品のバラツキになります。これは単純作業の場合に顕著で、『目分量』に頼っています。7,500個の小さな部品を一冬で製造したのですが、出来上がった製品を見ればどの時点で作業員がその作業が嫌になったかが分かります。製品の中にはスクラップ行きになるものも出てきます」今では協働ロボット溶接機がこの繰り返し作業を行っています。

 このシステムは、メーカーが切望している繰返し精度を提供し、またMT Solarの安定した製品品質の維持にも貢献しています。「顧客に『実はあの部品はロボットが溶接したんです』と教えると、どなたも喜びます。 どれも全く同じ仕上がりでしかも高品質だからです。URロボットとVectisのシステムは、これまで見た中で最高の組み合わせだと思います」

「さらに、このシステムのバラツキのなさと柔軟性により、MT Solarは大企業と競争できるようになりました。製造品質、新技術に対する拡張性、そして小さい会社の身軽さを組み合わせられるようになったのです。これは非常に強力な組み合わせだと考えています」(Jordan氏)

 MT Solarは重くて大きな部品を取り扱う新しい作業向けに協働ロボットをすぐに追加導入する計画です。一部の持ち上げ作業から作業員を解放することにもつながります。「現場は、協働ロボットに触れたことでいろいろアイデアを思いつく人間で溢れかえっています」(Gillin氏)