😂🌳ぼくたちのいちょうの木

🌳ぼくたちのいちょうの木

「ぼくたちのいちょうの木を　きらないで」
「きっちゃ　だめ！」
「きらないでっ」
みんなは　かわるがわる　さけびます。


🌳ぼくたちのいちょうの木

「くっさい　くさーい」「おえっ」「このにおいは　ネコのうんち」
秋ばれの日の　ようちえんのにわは　とてもにぎやかです。
ぎんなんをひろっているのは、ゆりぐみのこどもたち。
「あさこせんせい、しんやくん　あーんなに　ひろったよ」
しおりが　しらせにきました。
先生は　しんやのガッツポーズをみて　ふきだしてしまいました。
でっかい　はなせんなんかしてるんですもの。
みんながひろった　ぎんなんは、バケツに　山もりになりました。
ぎんなんは　二日ほど水につけ、かわをあらいおとして
かげぼしにすれば、バザーのうりものになるのです。

プレイルームで　しんやとまさきが
とっくみあいの　ケンカをしています。
「よこどりしたの　しんやじゃないか」
「オレが　つかうつもりだったんだぞっ」
ポカリ！
大きなつみきで　あたまをぶたれて、
まさきは　とうとう
なきだしてしまいました。
先生がかけつけて、しんやは
はんせいのへやへ
いれられてしまいました。
ほんとは　おはなしのへや
ですけどね。

いま　しんやのこころの中で
きかんぼ虫が　あばれているんでしょう。
だって、しんやは　ほんとは
やさしい子なんですから。
しおりが　水ぼうそうで
おやすみした日、
「しおりちゃん、ぼくにうつしな。
すぐなおるからね」
って、おまじないしてくれたり、
「チービ　チービ　チビすけやーい」
小がらなしおりを　みつけると、
いつも　からかう小学生から
まもってくれたのですもの。

「おーい　オレね、まさきにコブタンつくって
はんせいさせられちゃったよう」
いつのまに　ゆるしてもらったのでしょう。
しんやが　大いちょうのみきを　たたいてどなっています。

三日まえも　そうです。みんなが　いっしょうけんめい
つくった　どろだんごを　しんやが　ふみつぶしてしまいました。
「だんごのやつ、えばってたから　けっとばしてやったんだい」
おおごえでさけぶと、すっきりするのでしょうか。
ケロッとして　へやへはいってきました。

しんやには　おかあさんがいません。
三さいのとき、びょうきで　なくなったのです。
いまは　長野からでてきた　おばあちゃんと、
とうさんの三人ぐらしです。
大いちょうは　しんやのこと
なんでも　きいてくれるのかなあ……。
しおりは　いちょうの木を　みあげました。

まいとし、クリスマスまでの
五日かん、夜六時になると、
大いちょうに　ひがともされます。
きょうは、そのさいしょの日。
六じまえ、がいとうをけした
ようちえんのにわは、
こどもやおとなで　いっぱいです。
みんなが　いきをつめて
みまもるなか、
六じのチャイムとともに
ひがパァッと　ともりました。

「おおーっ」「きれーい」
いっせいに　はくしゅが
おこりました。
ひとつひとつのあかりが、
てらしあって、夜ぞらを
きんいろに　いろどりました。
みんなは　さむさをわすれて
みあげています。

しおりは　なんだかうつくしい
おんがくに　つつまれている
ように　おもえました。

春。しんやたちは　年長のひまわりぐみに
なりました。
五月なかばの土よう日、えんちょう先生から、
どきんとするおはなしが　ありました。
あの大いちょうが　きられてしまうというのです。
「ええっ　どうして」
「きっちゃ　だめ！」
しんやのこえが　ホールにひびきました。
「みなさんの大すきな大いちょうは、
ようちえんにとっても　たいせつな木です。
けれど、まいとし、おちばが　まわりのみちや、
ちかくの　いえのやねにも　たくさんまいおちて
めいわくを　かけてきたのです」
「だから、ぼくたちも　みちをはいたんだよ」
と、てつろう。

「そうですね。でも、よその
やねまで　そうじはできません。
やねにつもったおちばは、雨どいをつまらせ、
みなさんを　たいへん　こまらせてきました。
まいとし、くじょうが　でるたびに　おわびして、
木をきるのを　なん年も　まってもらってきたのです。
やくしょも、これいじょうは　まてない。
木をきりにいく　というのです。
それなら　こちらで、木のことを
よくしっているおじさんに　たのんで、
だいじに　きってもらうことにしました。
月よう日、そのおじさんたちがきます。
あぶないので　にわで　あそばないようにしてください」
「木が　かわいそう」
しおりの目から　なみだが　ほろりとこぼれました。
「いちょうの木は、みなさんのやさしいきもちを
わかってくれていると　おもいます」
えんちょう先生のはなしは　おわりました。

月よう日のあさです。
「きたぞう！」
まどのそとから　しんやが　どなりました。
「よし、いこう」
てつろうがうなずくと、まさき、たけし、
りょうすけ、それにつづいて、ゆか、みはる、
しおりも　にわへ　とびだしました。
みんなは　大いちょうを　せにして
ぐるりと　わになり　うでをくみました。
じひびきを　たててやってきた
ダンプカーと、レーキドーザを　つんだ
ドレーラが、みんなのまえで　とまりました。
おじさんたちが　バラバラッと
おりてきました。
「ぼくたちのいちょうの木を　きらないで」

😭すっげえかわいい✨

「きっちゃ　だめ！」
「きらないでっ」
みんなは　かわるがわる　さけびます。

しらせをきいて、えんちょう先生が　かけつけました。
「土よう日に　ちゃんとわけを　はなしたでしょ。
わからないこといわないで、さあ、へやへはいりなさい」
えんちょう先生は、こわいかおをしています。
「あなたたちのきもち、よくわかるわ。わたしもおなじよ。
でも、ゆるしてね。みんながしんぱいしているから
へやへいきましょう」
なきだしそうな　あさこ先生をみると、
しんやもてつろうたちも　からだから
ちからがぬけていきました。
こどもたちが　おされるように　とぼとぼあるきだすと、
「ほい、ロープだ」
おやかたのさしずで　おにいさんが　いちょうの木に
するすると　のぼっていきました。

おやかたが　ねもとに　つけたしるしにｋ
おじさんが　チェンソーをあてました。
キュィーン
こなのような木くずが、まわりにとびちります。
こんどは　すこしうえから　ななめしたに
きりこみました。
パコン！
こっぱがとんで、木のねもとが
ぱっくりくちをあけました。
おやかたが　うなずくと、そのくちへまた、
チェンソーが　さしこまれました。
キーン　ギュィーン

わたりろうかのはしらに
しがみついていた　しんやが、
「うおーっ　うおーっ」
と、さけんで　すなばへとびこみ、
すなを　めちゃくちゃにかぶりました。
あたまからふくまで　すなだらけです。
とびだしたあさこ先生が、しんやを
ぎゅっと　だきしめました。

チェンソーが　うなりをとめました。
木につながれた四本のロープを
ひっぱっていたおじさんたちが、
すこしずつゆるめていきます。
メリメリメリッ　バキッ
ザザザザ　ザーッ　ズッシーン
じひびきと土けむりをあげて、
大いちょうの木が　たおれました。

すると、まっさおな
そらがひらけ、たいようの
ひかりが　にわじゅうに
ぱあっと　ひろがりました。

すなばにでてきた　ひまわりぐみの
こどもたちを　おさえていた
あさこ先生の手が　ゆるみました。
てつろうがはしって　たおれた木の
きりかぶを　みるなり　かけもどり、
「せんせい　木が　木がないてるよっ」
そうさけんで　またかけだしました。
しんやも　ほかの子たちも
あとにつづきます。
きりかぶから　水が　じわじわ
しみだしていました。

こどもたちは
きりかぶを　かこみ
やさしく　きりくちをなでました。
「いまごろの木は　いきおいが
あるからな」
「んだ　んだ」
おじさんたちは　つぶやきながら、
こどもたちのようすを
いとおしそうにながめています。
「木が　しんじゃったよう」
たおされた木のわきで、しおりが
ヒーッとなきました。
しんやは　くちびるをかんで、
しおりの手をぎゅっと　にぎっています。

さっきまで
えだというえだ　いっぱいに
ぴんと手を　ひろげていた
なん千なん万の小さなはっぱが
くたんとなっていました。

おじさんたちは　たおした
木のえだを　てきぱきとはらい、
みきを　八本のまるたにしました。
こどもたちは　とおまきに
みまもっています。
「おい、レーキだ」
おやかたは　はやく　かたづけるように
あごをしゃくりました。
おにいさんたちは　みきやえだを　まとめ、
手ばやく　ダンプカーに　つみあげていきます。
トレーラからおろされた
レーキドーザが　きりかぶもろとも
ねを　ほりおこそうと、大きなてつのつめを
ガッと　じめんにつきたてた
そのときです。

しんやが　とびだし、
「おじさん！　きりかぶまで
もってかないで！」
と、さけびました。
「あぶねえ　ぼうや！」
おやかたが　しんやのかたを
つかみました。
「きりかぶ　とらないで」
「おじさん、おねがい。もってかないで」

こどもたちは、おしとどめる
えんちょう先生をゆさぶり、
おおごえでさけびました。
きりかぶを　みつめていたえんちょう先生は、
「まことにあいすいません。
きりかぶは……、
このままに　しておいてください」
と、あたまをさげました。
「こどもつうもんは　かわええもんですな」
おやかたは手のこうで　はなをこすると、
レーキドーザを　かたづけるように
あいずしました。
レーキドーザは　トレーラにもどされ、
木をつんだ　ダンプカーと
いっしょに　もんからでていいきました。

にわが　あかるくなったぶん、
しんやのこころに　ぽっかり　あながあきました。

「きのうもきょうも　どうしたんだい。
ごろごろしてて。
どっか　ぐあいでもわるいんかい」
ぬいものの手をとめて、
おばあちゃんが　しんやのひたいに
手をあてました。
「ばあちゃん、ようちえんの大いちょう
きられちゃったんだよ」
「そうだってなあ。
“わかばだより”にかいてあったが」
「…………」

「しかたないわな。いのちあるもんは
いずれ、土になるんだで。
なあ、しんや。
かあさんがげんきだったころ、
長野のお山へいったろ。
あんとき、大きなブナの木が
たおれて　くさっとったな。
そのそばに　しんやぐらいの
ブナのわか木が、
二、三本はえとったの
おぼえとらんかい。
そうやって、いのちは
おやから子へ　ずっと　ずうっと
くさりみたいにつながっていくもんだよ」
おばあちゃんは　しんやのせなかを
とんとんしながら　はなしてくれました。

「せんせい、バザーで、
ぎんなん　みんな　うれちゃった？」
つぎの日、しんやが　ききました。
「たしか、一ふくろ　のこっていたとおもうけど、どうして？」
「ぼく、うちのにわで　そだてたいんだ」
しんやは　ちょっと　てれくさそうに　いいました。
「でも、また　でっかくなって
きらなきゃならなくなったら　どうするの」
しおりが　しんぱいそうに　たずねました。
「だいじょうぶ。ぼくくらい
大きくなったら、かあさんが　うまれた
長野の山に　うえかえてやるから」
「そう。お山なら　はっぱが
いくらちっても、だれも
こまらないもんね」
しおりは　ほっとしました。
ふたりは　あさこ先生から　ぎんなんを
二つぶずつ　もらって　うちのにわにうめました。

あれから　一年が
たちました。
しんやたちは
わかば小学校の一年生です。
にわにうめたぎんなんから
めがでて　十センチくらいに
のびました。
じきに　大きくなるでしょう。


２０００ねん７がつ２０にち　はっこう
えほん・こどものひろば

😂思い出す♪まったく同じ経験を小学生のころにしたよ✨自分も大人を止めたけど無駄だった😢


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