うんのいいにせざむらい

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わらいばなし
よみきかせ絵本


うんのいいにせざむらい

おうちのかたへ
このお話は、とても人気が高く、全国で語られ
ています。弓矢の使い方も知らない男が、幸運を
つかむ話ですが、似たように実際に起こりそうに
ない幸運が次々にまいこむ昔話では「鴨とりごん
べえ」や「運のよい猟師」が有名です。


ある　町で、けんどうを　おしえる
どうじょうに、ぼろぼろの　きものを
きた　男が　やって　きました。
「わしは、けんどうが　とても　つよい。
どうか　ここで、やとって　もらいたい。」
男が　そう　いうと、
どうじょうの　ぬしは、
「ほんとうなら、やとって　やろう。
つよそうな　かおを　して　いるから。」
と、いいました。

でも、この　男は、けんどうなんて
ちっとも　できなかったのです。
ですから、
「けいこを　つけて　ください。」
と　いわれると、あたまが　いたい、
おなかが　いたいなどと　いって、
ぜったい　どうじょうには　出ませんでした。
ところが、どう　いう　わけか、
どうじょうの　ぬしの　むすめが、
男を　すきに　なったのです。
「しかたがない。あの　男を
むすめの　むこに　しよう。」
どうじょうの　ぬしは　いいました。
これで　男は、どうじょうの　わかだんなです。

ある　よる、わかだんなは、
こっそり　どうじょうに　いって、
ゆみを　いじって　みました。
「ふうん、これは　どうやって
うつんだろう。」
なにせ、はじめて　さわったので、
うまく　いきません。
やを　ゆみに　つがえて、
ゆみを　ひいて　みました。
とたんに、やが　手から　はなれて、
しょうじを　つきぬけて、
にわに　とび出して　いきました。
「いけない。しかられる。」
男は、あわてて　ねどこに　もどると、
ふとんを　かぶって、ねて　しまいました。

つぎの　あさ、にわを　そうじ　していた
人が、さわぎだしました。
「かもに、やが　ささって　いる。こんな　ことが
できる　人は、どうじょうには　いないはずだ。」
そこで、わかだんなは　ふとんから
のこのこ　おきだして　いいました。
「その　かもは、ゆうべ　わしが　うったものだ。」
「おお、さすがに　わかだんなだ。」
みんなは　かんしんして、
わかだんなを　ほめあげました。
それでも、わかだんなは　どうじょうに　出ません。
いえの　人たちも　あきれて　しまいました。
「あんな　男は、もう　いらない。
いっそ、山に　やってしまおう。」
ちょうど、あきの　おわりでした。
山おくでは、もう　ゆきが　ふっています。

どうじょうでは、みんなで　かりを
する　ことに　しました。
わかだんなの　おくさんは、
わかだんなに　ねむりぐすりを　入れた
まんじゅうを、たくさん　もたせました。
山に　つくと、みんな　はりきって、
いのししや　うさぎなどを　おいます。
「うさぎを　しとめたぞーっ。」
「それ、いのししが
そっちに　はしったぞ！」
そんな　こえが、山に　ひびきます。
でも　わかだんなは、かりなど
やった　ことが　ありません。
うろうろ　して　いる　うちに、
みんなと　はぐれて　しまいました。

とつぜん、山の　ほうから、
ギャー　ギャー　ギャー
と　いう、たくさんの　さけびごえが　きこえて　きました。
おどろいて　見上げると、たくさんの　さるが、
わかだんな　めがけて、おしよせて　くるのです。
わかだんなは、あわてて　そばの　木に　のぼりました。
でも、さるも　どんどん　木を　のぼってきます。

「これを　くって、山へ　かえれ。」
わかだんなは、もって　いた　まんじゅうを
じめんに　まきました。
さるたちは、よろこんで　まんじゅうを　たべました。
そして、つぎつぎに　じめんに　ねころんで　いきました。
わかだんなは、木から　おりると、さるを
けとばして　みました。ピクリとも　うごきません。
そこで、やを　さるたちの　おしりに　さしました。
そして、みんなを　よびました。
「おーい、おーい、おれは　ここに　いるぞーっ。」

つぎつぎに　やってきた
どうじょうの　人たちは、
さるたちを　見て、びっくりです。
「これは、ぜんぶ　わかだんなが
うったんですか。」
そう　きくので、わかだんなは
むねを　はって　こたえました。
「そうさ、ぜんぶ
おれが　うったんだ。」
「すごい　うでですねえ。」
みんなは、かんしん　しながら、
さるを　あつめました。
それから　わかだんなは、
「しりあなの　大先生」と　よばれて、
一生　しあわせに　くらしたと
いうことです。


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