学生ロマンス 若き日 1929年製作
監督 小津安二郎
出演者 結城一朗 斎藤達雄 松井潤子 飯田蝶子 高松栄子 小藤田正一 大邦一公(大国一公) 坂本武 日守新一 山田房生 笠智衆
ロケ地 妙高高原スキー場 妙高高原駅(旧田口駅)
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男子大学生2人が、同じ女性に恋をしてしまう。男の1人はお調子者で、もう1人は怠惰だった。
試験期間が終わったある日、スキーをしに出かけた彼らは、旅先で惚れた相手と再会。さっそく2人は彼女をめぐりライバル同士となるが、その恋には意外な展開が待ち受けていた・・・。
Filmarksに投稿された感想・評価
「2階かし間あり」
男2人に女1人の恋の喧嘩友達
若い笠智衆は陽に焼けていて、笑うとザ・ギース尾関そっくり。
字幕すくなくて助かる
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スキーでこけて座るあの瞬間と、小津の三角形座位の融合。光量のリアリティ。喫茶店内向かい合い男女横位置での外光とペンキコーヒーカップ、バーで飲んでいるみたいな下宿での勉強シーンが良い。2階に居ても来訪に気付く引き戸ガラガラショットの音の存在感。雪メガネ・滑走中・転倒中の主観の運動性。駅からスキー場までの果てしなく遠いような俗世でもレジャーでもない狭間の異空間好き。
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基本的にはラブコメディなので、特にテーマらしいテーマはなし。強いて言えば小津版『私をスキーに連れてって』😂な感じ。ストーリーは非常に単純。二人の大学生、渡辺(結城一郎)と山本(斎藤達雄)が女学生の千恵子(松井潤子)に恋をする話。戦後の小津作品のような古き良き日本は描かれていない。とてもモダンな大学生生活。部屋着は和服、外出は洋服。その両方がとてもオシャレなんですよねえ。後年の「小津好み」は和服によく現れていましたが、初期の「小津好み」は洋風でとてもハイカラ。小物に「好み」がよく現れているのは初期からそうだったんですね。
本作に歴史的な価値は積極的に認めるものの、マニア向けの一作だと思います。他に観るべき小津作品はもっとたくさんある。メインどころを全て観終わって、もう観るものもないから最初から観てやろうか。そんな感じで接するような作品だと思います。
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またしても昨日の敵は今日の友
2人分の片想いを込めて捨てた手作り靴下
そして再び窓辺に貼る「貸間あり」
まだ見ぬ相手に想いを馳せてワクワクしながら床につく2人
100年前の映画に恋のけじめのつけ方を教わった
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会話の中でバストショット・会話する二人のショット・手元のクローズアップがテンポよく切り替わっていく。基本的に日の丸に近い構図で何を見たら良いかが分かりやすく、そこからストーリーもすぐに拾える。サイレントの会話劇なのに字幕カットが意外と少なく、如何に撮影と編集で伝えるかという意識が見える。雪山のシーンでは色々な工夫が凝らされた構図も。興奮したのは序盤のタバコの煙がかかるコーヒーカップのクローズアップ。煙への光の当たり方が素晴らしいし、コーヒーカップの向こう側で靴下の受け渡しをしている。靴下はストーリーに絡むアイテムなんだけど、それを少しぼかしてコーヒーカップにピントを合わせるのオシャレだなー。小津安二郎は後期になると病的に構図にこだわるそうだけど、初期のこの作品でもそこまでではないにせよ、美意識は感じられた。
ストーリーは一人の女性を友人二人で争うだけ。それだけなんだけど、この二人が可愛らしくていい。そして大正時代後期の若者のカルチャーが覗けるのもいい