説明
肝臓内科は、ウィルス性肝炎、難治性肝疾患、肝硬変症、肝臓がんなどの診断と治療を行っています。また、自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法や肝がんに対する鉄キレート療法など先進的な臨床研究にも積極的に取り組んでいます。
ここでは、最新の肝臓がんの治療についてご紹介します。
■肝がんの治療
肝がんの治療は、他のがんと同様に外科的な切除が可能な場合は、手術による根治を目指すのが基本となります。しかし、肝がんの場合、肝硬変や慢性肝炎などの基礎疾患がある場合も多く、がんの進行度合いや患者さんの病態に合わせて、多岐にわたる治療を行わなければなりません。山大病院では多くの症例と豊富な経験をもとに、段階に応じた肝がん治療を展開しています。また、それに必要な設備も充実したものとなっています。
■経皮ラジオ波焼灼法(RFA:Radiofrequency Ablation)
早期がんの場合、ラジオ波焼灼法・RFAを中心とした治療を行っています。これは刺した針にラジオ波を流し、腫瘍を焼灼するものです。腫瘍に直接針を刺す単極針での焼灼は、がん細胞の焼灼が直接行えるので確実性は高いのですが、針に付着したがん細胞による播種のリスクも考慮しなくてはなりません。
そのため、双極針を用いたnon-touch ablation治療も行っています。これは多数穿刺により、直接がん細胞に触れることなくエリア的な焼灼を行うものです。
播種のリスクは軽減されますが、確実な腫瘍の焼灼を行うためには、より正確な腫瘍の位置の把握が必要となります。そこで、私たちが活用しているのがCT画像とMRI画像を統合せたfusion画像です。画像技術の精度は年々向上し、医療の現場でも大きく貢献しています。
■超選択肝動脈化学塞栓療法(TACE:Transcatheter Arterial Chemoembolization)、肝動注化学療法(HAIC:Hepatic Arterial Infusion Chemotherapy)、放射線療法(RT:Radiotherapy)
中等度の進行がんについては、超選択肝動脈化学塞栓療法・TACEを行います。これはカテーテルを使い、がん細胞に抗がん剤を注入した後、塞栓物質により、がん細胞に栄養分を供給している血管を人工的に塞ぐ治療です。
進行性の肝がんの場合は、遠隔転移や門脈などへの浸潤がみられることが多く、治療は困難となります。山大病院では、腫瘍を縮小させる効果の高い、肝動注化学療法・HAICや放射線療法・RTを積極的に導入しています。また、近年、著しく進歩している分子標的薬による治療と組み合わせることで、治療成績の向上を目指しています。
(おわりに)
治療法や薬の開発、治療機器の進歩など肝臓がんの治療を取り巻く環境は常に変化しています。
私たちは患者さんに、より最適な治療を提供できるよう、スタッフ一丸となって日々の診療に取り組んでいます。