「何かを説明する時、極端に声がうまく出ないので『風邪ひいてるの?』と言われる」。藤田梨那さんが苦しんでいる症状は、声が詰まって出しにくくなる「けいれん性発声障害」。
声を出す時、意志に反して声帯が強く収縮し締めつけ合って正しく震えず声が詰まってしまう障害で、全国で約7000人いるという調査も。20代~30代の女性に多いそうだ。突然発症し、原因は不明。ストレスなどの心因性によるものと思われがちだが、そうではない。医師も診る機会が少なく、耳鼻咽喉科に行っても障害を見極めるのが難しいという。
藤田さんが声の異変を感じ始めたのは、2022年6月。「仕事でマイクを使ってしゃべることがあるけど、しゃべる時だけ苦しい声というか詰まる感じが出るようになった」。接客が好きだったが、なるべく声を出さない仕事を任されるように。徐々に日常会話でも声が詰まる症状が出てきて、耳鼻咽喉科で診てもらうが判断がつかず…。
紹介してもらった大学病院で「けいれん性発声障害」と診断された。この障害は、声のトレーニングや薬を使用しても良くならないケースがあるという。「もう治らないかと思って、ずっと心配で苦しかった」。不安な日々から解放されたいと思った藤田さんは去年9月、手術することを決意。
手術は、横幅およそ2センチの「チタンブリッジ」を声帯につける方法だ。2017年に厚生労働省から製造販売が認められた医療機器で、手術では医療保険が適用される。喉にある甲状軟骨を切り、締めつけ合っている声帯の幅をチタンブリッジで固定し声を詰まらなくさせる。手術は局所麻酔で、患者の声を確認しながら行われる。「おはようございます、ありがとうございました」時間をかけて、自分にとって声を出しやすい声帯の幅を決めることが重要となる。
1週間後、初めて声を出した藤田さんは「スムーズに声が出てすごくうれしい。たくさん仕事して話して楽しい生活が送れたら」。医師によると、手術の痕は1年ほどでほとんどわからなくなるという。
一方、手術をせずに「けいれん性発声障害」と向き合うのは、しのさん(仮名)。普段の生活では症状が出にくいが、初めての場所や初対面の人と会話する時には声が詰まり気味に。症状は軽度のため、9年前からボイスクリニックで治療を受けている。「ボツリヌストキシン注射」で、締まり過ぎている声帯の筋力をマヒさせて一時的に症状を失わせる。しのさんが録音した、注射を打つ前と後の声を比べてみると、打った後の方が声がクリアに出ている。
この注射の効果が続くのは約3か月で、そのため継続的に打ち続けている。最適な薬の量や注射を打つペースが見つかるまで、時間がかかる人もいる。しのさんは注射治療を行う人に「自分に合った適量を見つけるまで頑張って治療を続けてほしい」と話す。
こうした「けいれん性発声障害」など、声の悩みを抱えている人たちが話し合える場も広がっている。発声障害患者会が、北海道から西日本まで全国5か所で定期的に交流会を開催。手術をして声の出しづらさから解放された藤田さんは、「中途半端な声が出ることが多いので『あまりしゃべりたくない人なのかな』とか『愛想がない人だな』とか誤解されがち。そうではないと知ってほしい」。
(2024年2月2日放送「news every.」より)
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