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のうさぎの子は、しにものぐるいで ゆきをけります。
ゆきを けって、けって、けりあげます。
いきのつづくかぎり ゆきをけり、まえへ、まえへと
とびだしてゆきます。あしをとめた そのときが、
のうさぎの子の いのちの おわりなのです。
ゆきのよあけ
こおりつく さむさの、
しずまりかえった、よるの森です。
ゆきの すあなに、のうさぎの子が、
ひとりぼっちで、うずくまっています。
のうさぎの子は、ふゆげの、しろい ゆきのいろです。
かあさんとは、ずっと、はぐれたままです。
おそろしいきつねに、おそわれて にげた、
なつの あの日からです。
「にげてっ、はやく!」
かあさんがさけんで、べつべつに にげて、それから
かあさんは、もどってこないのです。まっても まっても、もどってこないのです。
そのときから のうさぎの子は、ひとりで、くさをさがしてたべ、ひとりで、トゲのある
ノイバラのしげみで、ねむりました。そこなら、あんぜんだと、おもったのです。
なつとあきが すぎてゆき、ふゆになると、ゆきのしたの かれくさをたべ、かたい木のかわを、
かじりました。ねむるのも、やすむのも、ゆきの すあなです。
ゆきは、ふとんのように、さむさから のうさぎの子を、まもりました。
毛づくろいも、ひとりで おぼえました。
耳を かおのまえに ひっぱり、まえあしで、ていねいになでつけます。
だいじな だいじな、手いれです。
うしろあしは、かたほうずつ たかくあげて ゆびをひらき、
からんだ毛を、くちで ていねいにお ときほぐします。
からだの毛も、すみずみまで きれいに なめました。
おそろしい きつねや ふくろうから、すばやく にげるためです。
毛づくろいが すっかりすんで、ふわふわになると、
からだをのばし、まるく うずくまって、ねむります。
しんしんと よるが ふけてゆきます。
はてもなく くらい森に、ゆきの
しろさだけが、どこまでも、どこまでも、
ひろがっています。
よるの ゆきの森は、ひっそりと
しずまりかえっています。
そのときでした。
かさ、こそ、とん! とっ、とっ、とととっ!
ゆきのとんねるを かけてゆく、
のねずみの かすかな あしおとがします。
そのあしおとを ききつけた いたちが、
かぜのように おいかけてゆきます。
やがて、「きゅうっ!」
森のどこかで、ちいさな ひめいが あがり、
こずえの ねぐらで、とりたちが ざわめきます。
それから、森は また、ひっそりと しずまりかえります。
まよなかを すぎたころ、くもがきれて、おつきさまが かおをだしました。
とおくの やまやまが、あおく、つめたく かがやきます。
森のなかは、きゅうに あかるくなりました。
こおりついた ゆきのうえに、木のかげが くろぐろと、ながくのびます。
手をつなぎあう 木のかげぼうしたち。
「ぼっ、ぼうーっ!」
まちぶせの木で、ふくろうの目が ひかります。
ふくろうは、えものを まちぶせています。
みしり、みしっ。
ひそかに ゆきをふみしめ、しのびよる あしおとがあります。
かざかみから、つよい きつねのにおいが ただよいます。
のうさぎの子は、からだじゅうの毛を さかだて、こおりつきます。
〈うごかないで! じっと ふせてっ!〉
かあさんのこえが、耳のおくに ひびきます。
「ぼっ、ぼうーっ!」
ふくろうの目が ぴかりとひかり、つばさをひろげて、かぜをよびます。
そのとき、
おどすような ひくいうなりごえが あがり、
キバをむいた きつねが、すあなめがけて
おどりかかりました。
それよりはやく、のうさぎの子は とびのき、
てっぽうだまのように とびだします。
おそろしさに、からだじゅうの毛が さかだち、
はが かちかちとなります。
せなかにせまる、きつねの あかいくち。
そらからは、ふくろうの
するどいかぎづめが ふりかかります。
のうさぎの子は、しにものぐるいで ゆきをけります。
ゆきを けって、けって、けりあげます。
いきのつづくかぎり ゆきをけり、まえへ、まえへと、
とびだしてゆきます。あしをとめた そのときが、
のうさぎの子の いのちの、おわりなのです。
はてもなくつづく、いちめんの ゆきの のはらに、
ひとすじの ゆきけむりが、まいあがります。
ふりかえるひまは、ありません。
きつねは すぐうしろにせまり、目のまえは、
たちはだかるように そびえたつ、ゆきの山です。
のうさぎの子は、さいごの さいごの ちからをふりしぼり、
いっきに かけあがります。そのとたん、
きゅうに、あしが かるくなりました。
ふかいゆきが、のうさぎの子の あしを、
かるがると ささえています。
おいつめる きつねのあしは、
ふかいゆきのあなに おちていました。
ゆき山の木ぎは、その枝えだで、
ふくろうのつばさを こばみ、さえぎりました。
のうさぎの子が、
ゆき山のてっぺんに
たどりついたとき、
きつねは、ふもとで
あらい いきをはき、
たちつくしていました。
ふくろうのすがたも、
もう どこにも
ありません。
のうさぎの子の
耳もとの にこ毛が、
かぜに かすかに
そよぎます。
よるが、しらじらと あけてゆきます。
とおくの山やまが あかがねいろにそまり、
みるまいn、まばゆい きんいろに かがやきます。
みずのそこに しずんだように、
ひかりをうしなっていた ゆきは、
しだいしだいに、ゆきのしろさを とりもどし、
あさのひかりに きらめきます。
ゆきの よあけの、ひかりの まほうです。
チッ、チチッ、ピッ!
森のどこかで、ことりたちがなきかわし、そのあと、
いっせいに、森じゅうのとりが さえずりはじめます。
アカゲラは、木のドラムを たたきます。
りすたちは、木のうえから かけおり、いちめんの
まぶしいぎんせかいを、かるがると とびはねます。
ゆきの森が 目をさまし、よあけのうたを うたいはじめます。
のうさぎの子は、たちあがり、耳を ぴん! とたてました。
血がたぎり、からだじゅうに ちからが みなぎっています。
つよいよろこびが こみあげてきます。
とん! とん!
うしろあしで おもいっきり つよく、ゆきをたたきます。
とん! とん! とん!
それは、いきる よろこびの ばくはつです。
そのよろこびを とおくへ つたえるのは、ふりつもった まっしろいゆきです。
よろこびに やさしくこたえる おとを つたえるのも、ふりつもったゆきです。
とん! とん!
とおくからこたえる おとは、
「あたし、ここに いるよ。ここに おいで」と、よびかけています。
のうさぎの子は、こたえます。
「とん! いま、いくよ。ぼく、そこに いくよ!」
のうさぎの子は、まっしぐらに かけだします。
まっしろい ゆきけむりが、あさのひかりに、まぶしく きらめきます。
しずかな、しずかな、ゆきの よあけです。
2012ねん11がつ27にち はっこう
えほん・こどものひろば
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